ケネス・トーマスマ著、浜野安宏監修、おびかゆうこ訳「パスキ・ナナ~ナゾをといた少女~」をご紹介します。
ネイティブアメリカンのクーテナイ族に伝えられている物語を著者が採話したものです。
主人公のパスキは、いつも失敗ばかりで「悲しがり屋」。
祖母に励まされ、がんばっていましたが、ある日一族の禁忌に触れる失敗をしてしまいます。
その失敗を挽回するために、一人で村を離れますが、そこで馬泥棒を目撃してしまい・・・・。
大自然の中で、9歳の女の子が生き抜いていく物語です。
この物語の中には、自然の中で生きるための知恵がとてもたくさん盛り込まれています。
ネイティブアメリカンたちは、たき火を囲んでこのような物語を子供たちに話して聞かせたのでしょう。
物語は架空の楽しみのためのものではなく、生きる知恵を子供たちに継承していくための大事な役割を果たしていたのです。
こういう物語を読むと「生きる知恵」について考えさせられます。
私たちはとても便利な世の中に暮らしていて、「何でもできる」ような気分になっていますが、実は「何にも出来ない」のではないでしょうか。
火をおこすにしても、食料を調達するにしても、自分一人の力では、なすすべがありません。
この物語の少女は9歳にして、自分で食料を得、隠れ家を確保し、敵から身を守りながら、毛皮や保存食まで手に入れます。
はっきり言って、この9歳の少女の「知恵」に私は遠く及びません。
文明社会に暮らす私たちには必要のない「知恵」だという方もいらっしゃるでしょうが、本当の「知恵」とは何なのか、今一度考えさせられる、いいお話でした。
*ケネス・トーマスマさんは、ネイティブアメリカンの伝承物語を採話して、「すばらしきインディアンの子供たち」シリーズとして、出版されています(現在7冊)。日本ではこの「パスキ・ナナ」のほかに「ナヤ・ヌキ」「モホ・ワット」の3冊が翻訳・出版されています。
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