百まいのドレス
エレナー・エスティス 著、石井桃子 訳、ルイス・スロボドキン 絵「百まいのドレス」です。
私がこの本と出合ったのは小学校高学年の頃、タイトルも「百まいのきもの」でした。(時代がわかりますね)
最初に読んだときに自分がどんな感想を持ったか忘れてしまいましたが、なんだか寂しい気持ちが残った本でした。薄い青を基調とした表紙と挿絵が印象的でした。
さて、今回○十年ぶりに再読しました。
タイトルだけでなく本のサイズも訳も新しくなっていましたが、始めて読んだときの気持ちがよみがえってきました。
簡単に言ってしまうと「いじめ」を取り扱った本です。でもよくある「いじめ啓発本」ではありません。本当に静かに語りかけてくるような本です。
主人公はアメリカの小学生マデラインそして同じクラスのワンダ・ペトロンスキー。
ワンダは「とてもおとなしくて、めったに口もききません」というような女の子。
ワンダは毎日女の子たちにからかわれていました。
その原因は・・・。
こんな風に書くとこの本の深みがちっとも伝わってきません。
物語はワンダが月曜日に欠席したところから始まります。
始めは気にしていなかったマデラインでしたが、欠席が続いていることでワンダのことをあれこれ考え始めます。
色々と思い出しているうちに自分のことや自分の本当の気持ちにも気づいていきます。
・・・・これ以上書くと、本編の感動的な部分が損なわれそうですので、興味のある方は本編をお読みください。短編なので、あっという間に読めます。
それにしても、作者はこの短い物語の中にとても多くのものを詰め込んでいます。石井桃子さんのお言葉を借りれば「むずかしい言葉をひとつも使わずに、どこにでも、だれにでも起こりうる、人々の間の差別や、心の葛藤を、作者のエレナー・エスティスは、勇気をもって描いています。」となります。
最後の最後に心がホッと温かくなる展開なのですが、私は何故かその部分はすっかり忘れていて、ワンダが引っ越してしまった後のがらんとした寂しい空き家の挿絵だけをよく憶えていました。
子供心にも「無意識に犯してしまった罪」に思い当たる節があったからかもしれません。きっと今の子供たち(特に女の子)も同じような気持ちを感じてくれると思います。心の片隅にずっと残る本として、読んでみてほしいと思います。
最後に・・・。新訳版ですが、最初に訳された石井桃子さんご自身の再訳でした。100歳になられる石井さんの若々しい感性に元気をいただきました。└(^-^)┘
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